インフルエンザワクチン「注射」と「点鼻」は何が違うの?
予防接種

インフルエンザワクチン「注射」と「点鼻」は何が違うの?
インフルエンザの予防接種には、従来から使用されている注射タイプのワクチンと、鼻に噴霧する**点鼻タイプのワクチン(フルミスト®点鼻液)**があります。
「注射と点鼻では、何が違うのですか?」
「点鼻は生ワクチンと聞いたけれど、安全なのですか?」
このような疑問を持つ保護者の方も多いと思います。
ここでは、インフルエンザワクチンの「注射」と「点鼻」の違いについて、できるだけ分かりやすく説明します。
注射のインフルエンザワクチンとは?
一般的なインフルエンザの注射ワクチンは、不活化ワクチンです。
インフルエンザウイルスそのものを感染できない状態にして、免疫をつくるために必要な成分(抗原)を利用して作られています。
そのため、注射したワクチンのウイルスが体内で増殖して、インフルエンザを発症することはありません。厚生労働省も、不活化インフルエンザワクチンはウイルスとしての働きを失わせたものなので、ワクチン接種によってインフルエンザを発症することはないと説明しています。
注射によって体の中にインフルエンザウイルスに対する免疫がつくられ、実際のインフルエンザウイルスが侵入した際に、ウイルスを排除しやすくします。
注射ワクチンのポイント
不活化ワクチン
インフルエンザウイルスが体内で増殖することはない
ウイルスの感染性をなくし、免疫をつくるために必要な成分を利用している
注射による接種
接種後に注射部位の痛みや腫れ、発熱などがみられることがあります
点鼻のインフルエンザワクチンとは?
点鼻タイプの「フルミスト®点鼻液」は、**経鼻弱毒生インフルエンザワクチン(LAIV)**と呼ばれるワクチンです。
注射の不活化ワクチンとは異なり、弱毒化された生きたインフルエンザウイルスを使用しています。日本では2023年に製造販売承認され、2024/25シーズンから使用されています。
「生きたウイルスを使っている」と聞くと、「インフルエンザに感染してしまわないの?」と心配になるかもしれません。
しかし、フルミストに使用されているウイルスは、病原性を弱めた弱毒化ウイルスです。
なぜ鼻では増えるのに、体の中では増えにくいの?
フルミストの大きな特徴の一つが、温度に対する性質を利用して弱毒化されていることです。
インフルエンザウイルスは、感染する場所によって温度環境が異なります。
フルミストに使用されているウイルスは、鼻の中のような比較的低い温度では一定程度増殖できますが、体の深部のような高い温度では増殖しにくい性質を持つように設計されています。
つまり、
「鼻の粘膜では増殖できるが、体の中の高い温度では増殖しにくい」
という特徴があります。
これを温度感受性といいます。
そのため、鼻の粘膜で弱毒化されたウイルスが免疫反応を起こし、インフルエンザウイルスに対する免疫をつくることが期待されています。
※「25~30℃で増殖し、それより高くなると増殖しない」という単純な仕組みではありません。実際には、温度に対する増殖性が制限されるように弱毒化されたウイルスを使用しています。
注射と点鼻では、免疫のつくられ方にも違いがあります
注射ワクチンは、主に体の中でインフルエンザウイルスに対する免疫をつくります。
一方、点鼻ワクチンは、インフルエンザウイルスが最初に侵入してくる鼻の粘膜にワクチンを投与します。
そのため、全身の免疫だけでなく、鼻の粘膜における免疫反応も期待されています。
これは、注射ワクチンと点鼻ワクチンの大きな違いの一つです。
注射と点鼻の違いを簡単に比較すると
注射ワクチン 点鼻ワクチン(フルミスト®)
ワクチンの種類 不活化ワクチン 弱毒生ワクチン
接種方法 注射 鼻に噴霧
ウイルス 感染性をなくしたもの 弱毒化した生きたウイルス
ウイルスの増殖 しない 鼻の粘膜で一定程度増殖する
特徴 全身の免疫をつくる 鼻粘膜での免疫反応も期待される
注射の痛み あり なし
接種対象 年齢等に応じて使用 原則2歳以上19歳未満
フルミスト®点鼻液は、現在、日本では2歳以上19歳未満の方が対象となっています。
点鼻ワクチンならインフルエンザにかからない?
点鼻ワクチンも「接種すれば絶対にインフルエンザにかからない」というものではありません。
インフルエンザワクチンの目的は、感染や発症を完全に防ぐことだけではなく、発症を減らしたり、発症した場合の症状を軽くしたりすることにもあります。
また、厚生労働省によると、経鼻弱毒生ワクチンでは接種後にインフルエンザ様の症状がみられることがあります。
どちらのワクチンを選べばいい?
注射ワクチンと点鼻ワクチンには、それぞれ特徴があります。
「注射が苦手なお子さんなので点鼻を選びたい」
「従来の注射ワクチンを接種したい」
など、お子さんの年齢や体調、これまでの接種歴、持病などを考慮して選択することが大切です。
特に点鼻ワクチンは生ワクチンであるため、**免疫機能に異常のある方や免疫を抑える治療を受けている方など、接種できない場合があります。**妊娠中の方などにも使用できません。接種前に医師へご相談ください。
まとめ
インフルエンザワクチンには、
注射=不活化ワクチン
点鼻=弱毒生ワクチン
という大きな違いがあります。
注射ワクチンは、感染性をなくしたインフルエンザウイルスの成分を利用して免疫をつくります。
一方、点鼻ワクチンは、弱毒化されたウイルスを鼻の粘膜に噴霧し、鼻の粘膜で免疫反応を起こすことを利用したワクチンです。
どちらにもそれぞれ特徴がありますので、お子さんに適したワクチンについて、接種前に医師へご相談ください。
